先日、私たちは日本の保育園長先生方と共に、8つの個性豊かな保育施設・教育機関を巡るデンマーク視察研修を実施しました。幼児教育の先進国として知られる彼の地で、私たちは何を目の当たりにしたのか。

それは、特定の目新しい遊具やメソッドではありませんでした。

私たちが肌で感じたのは、「子どもは、自ら育つ力を持った有能な存在である」という、社会全体に根差した揺るぎない信頼です。そして、その信頼を形にするための、緻密で温かい実践の数々でした。

本記事では、この視察研修で見えてきたデンマーク保育のを、**「①子どもの主体性を中心に据えた保育観」「②意図的にデザインされた環境」「③『個』ではなく『チーム』で支える文化」**という3つの柱で読み解いていきます。


【第1の柱】「教える」から「引き出す」へ:子どもの主体性を中心に据えた保育観

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デンマークの保育の根幹をなすのは、「Fællesskab(共同体意識)」と「子どもの主体性」の尊重です。これは、大人が子どもを「テストする対象」や「教え込む対象」として見るのではなく、**「自らの能力を発揮する主体」**として捉えることを意味します。その思想は、園の隅々にまで浸透していました。

多文化地域に位置するBørnehuset Junibakkenでは、その日の活動内容や遠足の行き先まで、子どもたちのリクエストや投票で決定されます。当番活動「Focus barn」は、単なる役割分担ではありません。朝の会の進行役を務めるなど、園生活を運営する「名誉な役割」として位置づけられ、子どもたちは責任感と誇りを胸に、自分たちが園を動かしているという強い実感(オーナーシップ)を得ていました。

また、元牧場の広大な敷地を活かしたAdelgaardenでは、大人の監督下でノコギリやナイフといった本物の道具を使います。これは、危険をゼロにするのではなく、子どもが自らリスクを認識し、判断し、管理する能力を育むという「リスク・ベネフィット・アプローチ」の考え方に基づいています。大人が「危ないからダメ」と取り上げるのではなく、子どもの「やってみたい」という探求心と、それを乗り越える力を信じているのです。

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▶︎ 私たちへの問いかけ 日本の現場を振り返った時、私たちは効率や失敗のなさを優先するあまり、子どもから「自分で決めて、試す」機会を奪ってはいないでしょうか。デンマークの実践は、子どもの力を信じ、一歩引いて「待つ」勇気を持つことの重要性を、改めて私たちに教えてくれました。

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【第2の柱】意図的にデザインされた「環境」という名の第3の保育者

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デンマークにおける子どもの「自由」は、「放任」とは全く異なります。それは、保育の専門家である「ペダゴー」たちが、子どもの発達や興味を深く理解し、綿密な計画のもとにデザインされた環境によって力強く支えられています。

デンマーク最大規模を誇るBØRNEHUSET COLUMBUSでは、「Less is More」の哲学が徹底されていました。既製品の玩具を意図的に減らし、リサイクル素材や自然物など、子どもたちの創造性を刺激する素材を配置する。情報過多な環境を避けることで、子どもは自らの内なる興味に従って遊びに深く没頭できる「余白」を手に入れていました。

一方、特別な支援を必要とする子どもたちが通うDet særlige dagtilbud Troldpilenでは、環境が持つ力がより鮮明に現れます。室内や園庭は、子どもが刺激に惑わされずに一つの活動に集中できるよう、小さなエリアに区切られ(ゾーニング)、興奮した心を落ち着けるための「感覚の部屋(sanserum)」が用意されています。また、活動の流れを示す絵カード(ASK)は、すべての子どもに見通しと安心感をもたらすユニバーサルデザインとして機能していました。子どもを変えようとするのではなく、環境を整えることで、子どもが本来の力を発揮できるように支援する。その姿勢に、私たちは深い感銘を受けました。